オンライン授業/西ヨーロッパ地域研究A「ラングドック・ルシヨンの歴史と文化」

第1回目 ガイダンス(後半) 
                    


第1回の後半では、この授業の全14回の内容について、簡単に説明します。


第1回/南仏ラングドック・ルシヨンについて(ガイダンス)←前半で説明しました。

第2回 ケルト時代~ローマの進出
南仏ラングドック地方が、ローマによって征服される以前の時代と、
ローマによる征服活動について扱います。

この地域には、もとは土着のケルト系ヴォルク・アレコミク族がいました。
彼らは丘の上などに防御が施された要塞集落・要塞都市を築いてそこに住んでいました。
こうした要塞集落・要塞都市を「オッピドゥム」(Oppidum)と言います。
かなり古い鉄器時代の要塞都市ナージュ(Nages)は
紀元前9世紀~紀元前1世紀頃のもの、
またアンセリュンヌ(Ensérune)は紀元前4世紀~紀元前1世紀頃のものです。
特にアンセリュンヌは、ピレネー山脈の南のイベリア半島との
経済的・文化的交流がかなりあったようで、
それを裏付ける考古学的な遺物が多数見つかっています。

紀元前2世紀後半から、ガリア(今のフランス)南部にあたる
この地域にローマが進出を開始します。
紀元前121年には、この地域はローマの属州となりました。


ケルト人の要塞都市アンセリュンヌ

第3回 古代ローマ時代のラングドック・ルシヨン(その1)
今の南フランスにあたるローマの属州ガリア・ナルボネンシスは、
ローマの輝かしい都市文明の恩恵に浴します。
この属州の首都はナルボ、つまり今のナルボンヌ(Narbonne)でした。
ローマはこのナルボンヌを重要な拠点として、ローマの街道である
ドミティア街道(Via Domitia/Voie Domitienne)を建設し、
イタリアとイベリア半島(スペイン)の間を結びました。
このローマの道は人とモノの動脈として機能しました。
エロー県にある宿営地であるアンブリュッスム(Ambrussum)、
ピレネー越えの峠に作られたパニサール(Panissars)の拠点なども紹介します。

アンブリュッスムにあるローマ時代の橋の遺構

第4回 古代ローマ時代のラングドック・ルシヨン(その2)
ナルボンヌと並んで、ラングドックにおける
古代ローマ時代最大の都市の1つはニーム(Nîmes)です。
広い都市域を城壁で囲み、その中には、神殿や大きな円形闘技場が建設されました。
またこのニームに水を供給するために全長50キロという
長大なローマ水道が作られました。
現在残るガールの水道橋(ポン・デュ・ガール/Pont du Gard)は
世界遺産としても有名です。
これはローマ文明の建築技術の高さをうかがい知ることができる建造物です。

古代ローマ時代の水道橋ポン・デュ・ガール

第5回 中世ロマネスク聖堂の世界(その1)東ピレネー県のロマネスク聖堂・前半
中世はキリスト教の時代です。
ヨーロッパ各地にキリスト教の聖堂(教会)が建てられました。
11世紀~12世紀は、いわゆる「ロマネスク様式」の時代です。
この「ロマネスク」について説明した後、
ラングドック・ルシヨン地方を構成するそれぞれの県について、
味わい深いロマネスク聖堂を取り上げてゆきます。
最初の2回は、東ピレネー県です。
サン=ジェニ=デ=フォンテーヌ(Saint-Génis-des-Fontaines)、
アルル=シュル=テッシュ(Arles-sur-Tech)、
サン=マルタン=ドゥ=フノラール(St-Martin de Fenollar)、
サント=マリー=ドゥ=マルスヴォル(Ste-Marie-de-Marcevol)などを取り上げます。

サン=ジェニ=デ=フォンテーヌ教会入口のタンパン彫刻

第6回 中世ロマネスク聖堂の世界(その2)東ピレネー県のロマネスク聖堂・後半
引き続き、東ピレネー県のロマネスクについて説明します。
今回はこの県のピレネー山脈に点在する聖堂を取り上げます。
サン=マルタン=デュ=カニグー(Saint-Martin-du-Canigou)、
サン=ミシェル=ドゥ=キュクサ(Saint-Michel-de-Cuxa)、
セラボンヌ(Serrabone)などです。

サン=マルタン=デュ=カニグー修道院

第7回 中世ロマネスク聖堂の世界(その3)オード県のロマネスク聖堂
オード県のロマネスク聖堂には、非常に特徴ある彫刻が残されています。
これは場所的には東ピレネー県にあるキャベスタニーにいた
工匠(彫刻師)の手になるものです。
オード県ではこのキャベスタニー(Cabestany)の工匠の手による
彫刻が残るロマネスク聖堂がリュー=ミネルヴォワ(Rieux-Minervois)にあります。
また、古代文明の影響が色濃く残るコーヌ=ミネルヴォワ(Caunes-Minervois)や、
アレ=レ=バン(Alet-les-Bains)などの聖堂を取り上げます。

リュー=ミネルヴォワ教会、聖母マリア昇天の柱頭彫刻

第8回 中世ロマネスク聖堂の世界(その4)エロー県のロマネスク聖堂
エロー県については、次のような有名な聖堂を取り上げます。
サン=ギレーム=ル=デゼール(St-Guilhem-le-Desert)、
マグローヌ(Maguelone)、
シャトー・ドムラス(Château d'Aumelas)、
サン=フェリックス=ドゥ=モンソー修道院(Abbaye St-Felix-de-Montceau)、
グランモン(Grandmont)など。

サン=ギレーム=ル=デゼール修道院教会

第9回 中世ロマネスク聖堂の世界(その5)
           ガール県とロゼール県のロマネスク聖堂

ガール県ではニーム大聖堂(Cathédrale de Nîmes)、
ヴィルヌーヴ=レ=ザビニョン(Villeneuve-les-Avignon)など。
またロゼール県ではサン=テニミー(Ste-Enimie)、
ル・モナスティエ(Le Monastier)などを取り上げます。

サン=テニミー修道院付属教会の内部

第10回 カタルーニャ(スペイン)とフランスのはざまで
ラングドック・ルシヨン地方は、中世以来、ピレネー山脈の南のスペインと、
ピレネー山脈から北のフランスとの間で、
長いことその領有を巡っての争いが続きました。
具体的には、中世ではスペイン・カタルーニャのバルセロナ伯と
フランス側のトゥールーズ伯との対立、
また近世以降はフランス王国とスペインの対立です。
そうした争いの歴史をたどります。


スペインが建設したサルス要塞

第11回 異端カタリ派とアルビジョワ十字軍
12世紀から13世紀にかけて、キリスト教異端のカタリ派が、
ラングドック・ルシヨンで大いに拡大しました。
ローマ教皇とフランス国王は、この異端撲滅のために
「アルビジョワ十字軍」を組織します。
現在のエロー県のベジエという街などでは、
ほとんど全ての住民がこの十字軍によって大聖堂に追い詰められ、
その中で虐殺されています。
こうしたカタリ派とアルビジョワ十字軍の歴史について説明します。

カタリ派の城

第12回 カミザール戦争とジェヴォーダンの怪物
ロゼール県とガール県にまたがるセヴェンヌ山地では、
近世以降「ユグノー」あるいは「カミザール」と呼ばれる
プロテスタント勢力が拡大します。
中世のカタリ派撲滅の時と同じように、フランス国王は、
セヴェンヌのプロテスタント勢力を撲滅すべく、
いわゆる「カミザール戦争」(1702年~1705年)を展開しました。
またこのセヴェンヌの地では、
不思議で凶暴な「ジェヴォーダンの怪物」と呼ばれる獣が
出現して地元の農民たちを襲ったという
言い伝えがあります(1764年~1767年)。
これについても説明したいと思います。

ジェヴォーダンの怪物

第13回 スティーヴンソンとロバの旅
第12回で取り上げたジェヴォーダン(ロゼール県)~セヴェンヌ(ガール県)を、
1878年9月に、ロバ1頭と共に徒歩で旅行し、
その旅行記を残したイギリス・スコットランドの作家がいます。
『宝島』でも有名なロバート・ルイス・スティーブンソンです。
彼の旅行記『旅はロバをつれて』を紹介します。


ロバート・ルイス・スティーブンソン

第14回 ラングドックにおけるワイン暴動
20世紀初めに、ラングドック地方では、広く住民たちを巻き込んで、
ワイン製造業者たちの暴動が起こりました(Révolte des vignerons de 1907)。
海外からの安いワインの大量流入と、
それにも関わらず政府に徴収される高い税金に対する怒りが
爆発したものでした。
これは、当時の第三共和政下のフランスを揺るがす大事件に発展しました。
政府は暴動鎮圧のために軍隊を派遣しますが、
その部隊すら暴動を起こしたラングドックの住民たちの味方をする始末です。
南仏のワインの歴史をたどりながら、この暴動について紹介します。


1907年のワイン暴動

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※なお、14回から構成されるこの授業計画は、あくまでも目安であって、
途中で変更があるかも知れません。
新型コロナの状況、システム上の理由、その他さまざまな事情によって、
10回~14回の間で変動することも予想されます
(これは他の授業でも同じであると思われます)。
授業の予定に変更が生じる場合には、その都度このサイトで告知するようにします。

次回は5月19日(火)の3限の少し前、11~12時頃に、
第2回目の授業内容をこのサイトにアップするようにします。
http://languedoc.nn-provence.com/ にアクセスして下さい。

質問等は、メールで送って下さい。
また小コメントや最終レポートも、やはりメールで送って下さい。
nakagawa@tokai-u.jp

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