2020年度秋学期オンライン授業
ヨーロッパ・アメリカ特殊講義D/ヨーロッパ文明特殊講義D
フランス中世の教会建築と彫刻装飾(火曜2限)
第1回目 ガイダンス
(※ページの画像がうまく読み込まれない場合は、再読み込み(更新)すると、ちゃんと表示されると思います。
Windows10の場合は、ブラウザ(画面)の左上の丸いグルグルマークをクリックすると、最新の内容が表示されるはずです。)
この授業は、文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科の中川が担当する
「ヨーロッパ・アメリカ特殊講義D」です。
4年生以上の学生の時間割では「ヨーロッパ文明特殊講義D」という名前になっています。
テーマは「中世フランスの教会建築と彫刻装飾」です。
時間割の上では、火曜日の2限に設定されています。
週1回の授業で、2単位です。
授業はオンライン(インターネット)を利用して行います。
大学の「授業支援システム」「Open LMS」は、さまざまな連絡以外では使いません。
Zoomなどの同時会議システムも使いません(私はそれがあまり好きではありません)。
毎回、火曜日の2限の少し前くらいの時間(9~10時頃)に、
「授業内容」を次のアドレスにアップしますので、必ずアクセスして下さい。
http://languedoc.nn-provence.com/
そしてアップロードした「授業内容」を読んでもらう、というのが基本的なやり方です。
アップロードした「授業内容」は、1ヶ月くらいは削除しません。
質問などは随時メールで受け付けることにします。
メールアドレスは次の通りです。
nakagawa@tokai-u.jp
メールのタイトルには
「特殊講義についての質問」などという文言を入れて下さい。
いろんな授業を取っている学生から数十人単位で質問や小ペーパーが送られてくるので、
メールに、タイトルや氏名がないと何が何だか分からなくなってしまいます。
すみませんが、ご協力お願いいたします。
メールを送る時は、必ず所属学科、学生証番号、氏名を明記して送るようにして下さい。
時々、学番も名前もなしにいきなり用件だけメールしてくる人がいます。
そういうメールに対応するのは、なかなか難しいです。
次に、今年度の春学期に私が担当した
「西ヨーロッパ地域研究A」(南仏ラングドック・ルシヨン地方の歴史と文化)
を履修した人は、その授業内容と一部重複するところがあります。
中世フランスのロマネスク教会建築を扱うので、どうしても重なる部分が出てきます。
「ロマネスク」の説明のところとか、「東ピレネー県のロマネスク教会」などを
扱うところとかが特にそうなります。
ただし、今回は「特殊講義」なので、内容は「地域研究A」よりも細かくて詳しいものになっています。
春学期の「地域研究A」は、1年生もたくさん取ってくるということで、
内容をなるべくやさしくし、画像などもたくさん使って親しみのあるものにしましたが、
「特殊講義」はグレードナンバーも高く、より専門的な内容となります。
その分、文字が多くなることは覚悟しておいて下さい。
ただし、ロマネスク芸術を理解するうえで、画像はとても大切なので、
画像や図表をたくさん使うことに変わりはありません。
授業内容をアップするサイトのアドレス(http://languedoc.nn-provence.com/)は、
「西ヨーロッパ地域研究A」の時のアドレスと同じ「ラングドック」のものをそのまま使用するので、
春学期にその授業を履修した人は、パソコンなどでそのサイトを開くと、
パソコンが記憶している春学期の「西ヨーロッパ地域研究A」の画面が表示されてしまうかも知れません。
その場合は、最新の内容に「更新」して見て下さい。
Windows10の場合は、ブラウザ(画面)の左上の丸いグルグルマークをクリックすると、
最新の内容が表示されるはずです。
どうしても最新の「特殊講義」の内容が表示されない場合は、メールで私に連絡して下さい。
★授業スケジュール
授業のスケジュールは、おおよそ次のような感じになります。
必要に応じて、フランス以外の国の教会についても取り上げることにします(特にスペイン)。
あくまで今の時点での予定ですので、いろいろと変更が生じる可能性もあります。
第01回 導入・ガイダンス
第02回 プレ・ロマネスクの世界
第03回 ロマネスクとは何か
第04回 中世ロマネスク建築への古代ローマ文明の影響
●小コメント提出(予定)
第05回 キリスト彫刻の誕生
第06回 モニュメンタル彫刻の誕生・モワサックとベアトゥス『黙示録』写本
第07回 クリュニー修道院とその影響
●小コメント提出(予定)
第08回 スペインとイスラム文明からの影響
第09回 サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼と巡礼路教会
第10回 動植物や不思議な生き物たちの世界
●小コメント提出(予定)
第11回 シトー修道院
第12回 ゴシックの誕生/シュジェールとサン・ドニ大聖堂
第13回 パリのノートル=ダム大聖堂(その1)
第14回 パリのノートル=ダム大聖堂(その2)
●最終レポート提出
およそ3回に1度の割合で、「小コメント」(400~500字程度)をメールで送ってもらいます。
それまでの回の授業で印象に残ったところとか、
自分にとって興味深かったのはどんなところだったか、といったことを簡単に書いてもらうものです。
これは出席調査も兼ねています。
そして一番最後に「最終レポート」を出してもらいます(やはりメールで送信)。
「最終レポート」はもう少し文字数が多くなります。
以下、各回のもう少し詳しい説明です。
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第02回 プレ・ロマネスクの世界
通常、中世の11世紀~12世紀がいわゆる「ロマネスク芸術」の時代とされていますが、
古代ローマ時代が5世紀に終わったあとロマネスク期となるまでの間の6世紀~10世紀の時代が、
ロマネスク「以前」の芸術様式という意味で「プレ・ロマネスク芸術」と呼ばれます。
フランク王国のメロヴィング朝からカロリング朝の時代のものです。
ロマネスク期のものよりも、よりいっそう素朴で、中には不思議なモチーフの教会彫刻などが見られます。
ただし非常に古いものなので、フランスで残されているものは数が限られています。
具体的にはディジョン(Dijon)、クリュアス(Cruas)、ヴナスク(Venasque)、
モンマジュール(Montmajour)などの教会と彫刻装飾を取り上げる予定です。

(アルデッシュ県・クリュアスのサント=マリー教会)
第03回 ロマネスクとは何か
11世紀から12世紀中頃までの時代がいわゆる「ロマネスク」芸術の時代になります。
「ロマネスク」とは「ローマ風の」という意味で、中世前半の異民族の侵入に苦しんだヨーロッパが、
それらの困難が収まった後で、あらためて教会や修道院を建てようとした時にお手本としたのが、
古代ローマの建築様式でした。このロマネスク様式の教会建築や彫刻装飾、
壁画などの特徴について詳しく説明します。

(ガール県・マランサンのサン=ティルス礼拝堂、12世紀)
第04回 中世ロマネスク建築への古代ローマ文明の影響
「ロマネスク」とは「古代ローマ風の」という意味ですが、実際のところ、
12世紀の中世ロマネスク様式で建てられたキリスト教の教会は、
古代ローマ時代の建築物からの影響が非常に大きいと言えます。
中世のキリスト教建築に対する古代ローマ文明の影響について、詳しく見ていきます。
特に古代ローマ文明の建築物などがたくさん残っていた南フランス地域では古代の影響が強いので、
南フランスの教会や修道院を多く取り上げることになります。

(ガール県、サン=ジル教会の西ファサード)
第05回 キリスト彫刻の誕生
ヨーロッパでは10世紀頃までは、イエス・キリストの顔や姿を彫刻や壁画などで表現することは、
「偶像崇拝」に当たるとして、なかなか出来ませんでした。
キリストの姿が初めて彫刻に現れるのは11世紀になって、南フランスのスペインに近い
サン・ジェニ・デ・フォンテーヌ修道院教会(Saint-Génis-des-Fontaines)においてでした。
またそのすぐ後の時代に、同じ地域のサン・タンドレ・ドゥ・ソレド教会(Saint-André-de-Sorède)
でも現れます。この回では、ロマネスクにおけるこうしたキリスト彫刻の誕生について説明します。

(サン=ジェニ=デ=フォンテーヌ修道院教会のキリスト彫刻、11世紀)
第06回 モニュメンタル彫刻の誕生・モワサックとベアトゥス『黙示録』写本
彫刻で表現されたイエス・キリストが、教会入口を形作る扉口の「タンパン」に出現するのは、
やはり南フランス・東ピレネー地方のアルル=シュル=テック(Arles-sur-Tech)においてでした。
しかしそれはまだこの時点では大きさも小さく、表現も控えめなものでした。
その後、ロワール地方のアゼ=ル=リドー(Azay-le-Rideau)のサン=サンフォリアン教会や、
ブルゴーニュ地方シャルリュー(Charlieu )のサン=フォルテュネ修道院教会などに
次々と現れるようになります。
そしてついに南フランスのモワサック(Moissac)のサン=ピエール教会の扉口(ポルタイユ)において、
規模の大きい大彫刻(モニュメンタルな彫刻)として花開くことになります。
こうした大規模なモニュメンタル彫刻の出現と、スペインから伝わった
ベアトゥスの『黙示録』写本との関わりについて考察します。

(モワサック、サン=ピエール教会のモニュメンタルな扉口)
第07回 クリュニー修道院とその影響
10世紀初めにブルゴーニュで創建されたクリュニー修道院は、当時かなり規律が緩んでいた
修道院の世界に改革運動をもたらしました。そして12世紀にはヨーロッパ中に分院のネットワークを広げ、
「クリュニー帝国」とも呼ばれる輝かしい最盛期を迎えます。
教会建築の領域でも、クリュニーは大きな影響を広めました。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路を整備し、レコンキスタのバックアップの
役割を果たしたのもこの修道会でした。しかし結局はフランス革命と共にその歴史を閉じることになります。
このクリュニー修道院の歴史(栄光と衰退)について説明します。

(クリュニー修道院、ブルゴーニュ、ソーヌ・エ・ロワール県)
第08回 スペインからの影響
スペインは、8世紀からイスラーム帝国の支配下に置かれます。
フランスとはピレネー山脈を境に接しています。
中世の前半から、スペインからフランスへの文化的影響は少なくありませんでした。
特にイスラームがスペインを征服する前の西ゴート王国の芸術様式は重要です。
またイスラーム支配下に置かれたスペインのキリスト教徒の芸術(いわゆる「モサラベ様式」)も
ピレネーを越えてフランスに入ってきました。
スペインからの文化的影響がフランスにおける教会建築や彫刻などにどのような足跡を
残しているのかを見ていきます。
また、スペインのボイ谷のロマネスク教会とそこに見られるフレスコ画などについても取り上げます。

(スペイン・タウイのサント・クリメント聖堂、「荘厳のキリスト」のフレスコ画、12世紀)
第09回 サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼とイスラム文明の影響
10世紀頃から、スペインのガリシア地方にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラへの
巡礼が盛んになっていきます。スペインのレコンキスタ運動とも結びついて、
ヨーロッパ中から巡礼たちがサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かい、
12~13世紀頃に最盛期を迎えました。このスペインへ向かう巡礼の道に沿って、
いわゆる「巡礼路教会」と呼ばれる形式の聖堂が建てられました。
この回ではトゥールーズ(Toulouse)、コンク(Conques)、
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂(Santiago de Compostela)などを取り上げます。

(スペイン・サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂)
第10回 動植物や不思議な生き物たちの世界
ロマネスク芸術においては、教会や修道院の中に、実にバラエティーに富んだ彫刻装飾が見られます。
ロマネスクの彫刻家たちの想像力には驚かされるばかりです。
中にはキリスト教の教義からは説明不可能な、そして今のわれわれにも理解できないような
モチーフや図柄のものがたくさんあります。
そうしたロマネスクの不思議で奇妙な彫刻の世界を紹介します。

(ブルゴーニュ・サン=レヴェリアン教会の柱頭彫刻)
第11回 シトー修道院
シトー修道院は、11世紀終わりに、ブルゴーニュにおいて設立されました。
修道院改革を担っていたクリュニー修道院が、豪華さや贅沢さに捕らわれていってしまったのに対して、
シトー修道院は、再び清貧・質素・倹約を目指して活動を行い、組織の規模も次第に大きくなっていきました。
12世紀末から13世紀にかけてシトー会系の修道院は約1800を数えるに至り、
その繁栄ぶりはまさしく「シトー会の世紀」と呼ばれるほどでした。
シトー修道院の建築は、クリュニーのものと比べて、やはり極めて質素です。
きらびやかな装飾の類いはあまり見られません。
しかし、むしろ何もない静かで簡素な空間の中から、キリスト教の深い信仰の世界が立ち現れてくるのです。

(南仏ヴァール県、シトー派のル・トロネ修道院)
第12回 ゴシックの誕生/シュジェールとサン・ドニ大聖堂
12世紀半ばから、北フランスのパリ周辺(イル・ド・フランス地域)で、
いわゆる「ゴシック様式」の大聖堂(カテドラル)の建設が始まります。
強力に中央集権を進めるフランス王権の力、それと結び付いたキリスト教会の威光、
そして成長する都市と市民の力が合体して、あの巨大で豪華なゴシックの大聖堂が建設されたのです。
この回では、ゴシック様式の特徴、最初のゴシック聖堂であるサン=ドニ修道院教会、
そしてそれを建設した修道院長シュジェールの思想などを説明してゆきます。

(パリ近郊、サン=ドニ大聖堂の内陣部分、1136年から建設開始)
第13回 パリのノートル=ダム大聖堂(その1)
ゴシック建築で最も有名なパリのノートル=ダム大聖堂を取り上げます。
残念ながら2019年4月に火災が発生して、ヴォールト(天井)や尖塔が崩れ落ちてしまいました。
しかし西ファサードと二つの鐘塔、身廊部の側壁、後陣の全体、内部の彫刻類、宝物類などは
幸いにして被害を免れました。この回ではパリのノートル=ダム大聖堂の歴史と建設のプロセス、
そして建築の構造などについて説明をします。

(パリ、ノートル=ダム大聖堂、西ファサード)
第14回 パリのノートル=ダム大聖堂(その2)
前回に引き続いて、パリのノートル=ダム大聖堂の特徴、彫刻類、ステンドグラス
などについて説明します。
またノートル=ダム大聖堂に見出せる「反ユダヤ主義」的な要素についても取り上げる予定です。
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※なお、以上のように14回から構成されるこの授業計画は、あくまでも目安であって、
途中で変更があるかも知れません。
また新型コロナの状況、システム上の理由、その他さまざまな事情によって、
授業回数も変動することも予想されます(これは他の授業でも同じであると思われます)。
授業の予定に変更が生じる場合には、その都度このサイトで告知するようにします。
次回は、10月6日(火)の2限の少し前、9~10時頃に、
第2回目の授業内容をこのサイトにアップするようにします。
http://languedoc.nn-provence.com/
にアクセスして下さい。
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